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支援者と利用者という関わりだけでは生まれない、真の信頼関係とは⁉

株式会社HOPの代表吉田宗一さんは、福祉事業とは全く関連のない異業種から2022年8月に脱サラし、コネなし、ツテなしの正にゼロの状態から障害福祉分野に飛び込んだ。きっかけは、築30年の8部屋ある実家が所有するボロアパートを20年間全室を一括で借りたいという人と出会ったことだ。

この時はじめて障がい者グループホームを知った吉田さんは、福祉事業はマーケティング的に戦略が練られていないと感じ、「これなら新規参入でもなんとかなるかもしれない!」と最初は副業で事業をスタートさせるつもりだった。しかし、実際にやり始めてみたら片手間では到底無理だと分かり、当時幹部クラスだった輸入販売卸の会社をスッパリ辞めた。

グルホネットが運営するグルホ研究会にも初期の頃から参加している吉田さんは、端から見ていても熱いし、特別な存在だ。障害福祉事業は大して稼げない。商品の売り買いで生まれる関係とは真逆で、どちらかと言えば面倒な関係性を積極的に築いていかなければいけない。

事業オープンされてからたった1年3ヶ月で5棟のグループホームをオープンさせるに至った吉田さんの快進撃の一部分を、私たちはずっと見てきた。福祉事業所が陥りがちな支援者と利用者の関係性と収益とのバランス。その一つの解について聞いてみた。

インタビューアー:藤田 直(インクルージョングループ代表)

障がい福祉、保育園、高齢介護等の福祉事業を経営しながら、福祉事業の開業および立て直しなどの経営コンサルを10年間で500件以上手掛けている。
複雑な福祉事業の内容を、分かりやすく伝える解説に定評がある。
著書にAmazon、書店ランキング1位を記録した「ストーリーで学ぶ介護事業 共感マーケティング(幻冬舎)」あり。

自分で決めることが自立の第一歩 

藤田:障がい者グループホーム事業をオープンしてから1年3ヶ月の間で卒業された方もいらっしゃると聞きました。他のグループホームへ移るのではなく、一人暮らしを始めるというのはとても難しいことだと思うのですが、どのように関わられたのでしょうか?

吉田:2023年3月に入所されて12月に自立・卒業された方がいるんですが、来る前は自殺未遂もしていて、重度の鬱状態でした。彼女が入所した当時、お部屋もスケルトンで、家具がない部屋だったので、好きな家具を選んでいいよと自由に選んでもらいました。僕も暇だったんでIKEAやコーナンに連れて行ったり、一緒に家具を組み立てたりしつつ、自分が住みたい部屋を作ってもらい、新生活をスタートさせました。

そしたらどんどん体調もよくなって、働く意欲もでてきて、5月~6月くらいにA型の就労継続支援事業所に通うことになりました。さらに良くなってきて、「猫を飼いたい」という希望も出てきたんですが、グループホームでは猫は飼えないということで、自立に向けて貯金をして12月に一人暮らしを始めますといって卒業していきました。

藤田:本来の障がい者グループホームの目的の通り、利用者さんの自立支援をされたわけですが、なぜそれほど短い期間で、よくなったのでしょうか?

吉田:一つは家族との距離があったからだと思います。今までは同居されていたということもあって、グループホームで一人で暮らすという環境の変化で自由な時間ができたというのが大きかったと思います。

その方は女性だったので、娘みたいなもんでしたが、付かず離れずで一人にさせなきゃいけないと距離を置いた部分もあるし、困っているときは夜中でも駆け付けるということもありました。

藤田:ご本人の希望に沿って、程よく距離を保ちながら信頼関係を築いてこられているからこそ、安心していろいろなことにチャレンジできたのだと思います。正に国が事業者に求めている自立支援の理想形ともいえる事例ですね。

 

いかに社会と近い環境をつくれるかが鍵 統一ルールはいらない

藤田:自社のグループホームの推しポイントを教えてください。

吉田:利用者に合わせてルールを変えていることだと思います。薬の兼ね合いでお酒はダメという方もいますが、恋愛も自由ですし、門限も比較的自由です。日常的に門限が間に合わないのであれば個別で時間設定もしています。

藤田:「ルールがあるから守りなさい」ではなく「ルールは、利用者さんに合わせて変化させていくんだよ、その人たちがやりたいと思っていることで、あれば僕らは受け入れていくよ」という姿勢を保つことって、簡単そうでとても難しいですよね。その柔らかさが本来の自立支援に繋がっているとすごく思います。

吉田:僕自身もルールが嫌いで、ルールに縛られるのが耐えられないんです。事故が起こらないとか人を傷つけないといった最低限のルールさえ守ってくれたらいいと思っています。

藤田:自分のためにルールを柔軟に変化させてくれるという体験が、居心地の良さに繋がって、元気を取り戻して、自立に繋がっているんだと思います。社会はルールだらけでがんじがらめですからね。

吉田:家庭のルールに縛られて卑屈な想いをされている障がい者の方は多いです。うちに来て、「これしていいの?」「あれしていいの?」と聞く人が多いです。他のグループホームや家族と一緒にいる環境ではやってはいけない事が多かったんだと思います。

一部屋 一部屋があなたのお城なんだから、好きにしたら良いと思っています。ルールが一つでみんなでそのルールを守るのが前提だと個別支援はできません。一人一人とコミットし、「こういうことができるようになろうね」という目標一つとっても一人一人違うわけで、同じ関わり方はできないと思っています。

「支援者と利用者」ではなく「人と人」で向き合う

藤田:この業界はそんなに利益が出る事業ではないですが、経営面ではどんな工夫をされているのでしょうか?

吉田:(国からの給付金は)足りてないですよね。福祉業界の給与が低いというのは給付金ありきのところがありますよね。給付金が手厚くなれば働く人の給料を増やしてあげられるとも思うんですがそうはなっていないですよね。

向こう三年はしょうがないと覚悟してやっています。最初に起業した時から、自分の給料は最後だと思ってやっています。この仕事を始めたからには、下手すりゃ休みもないと思ってやっています。誰かが倒れれば最後は必ず自分で動くしかないと思っています。

とても大変な利用者さんも実際にいて、私たちもまだノウハウが少ない面もあり、自分自身未熟に感じている部分でもあるのですが、時が経てば経験が豊富になるし、難しい対応ができるスタッフも育つと信じています。

泣く泣く申し訳ないけれど、うちでは受け入れられないという方も中にはいます。

藤田:私たち福祉事業者はどんな人でも受け入れて困りごとをとっていくのが仕事ですが、実態としては受けることが難しいことがあるのも実情としてあると思います。


藤田:推しのスタッフはいますか?

吉田:「お節介をやきすぎない」ということをベースにしています。見守ることが一番の自立支援になると思っていますし、利用者さんができることは、やるまで手を出さない。(手は出さないけど口は出す!)そんな、おかんみたいな方もいます。

娘とその友人も世話人として働いています。大学1年生トリオって呼んでいるんですが、そのうちの一人は、「障害を持っている方たちは、人間関係の苦しい部分の縮図みたいなところがあるから、そういう人たちを見れるというのがすごくいい学びになっている」と人生経験として大学生が世話人をしながら学んでいるスタッフもいます。

藤田:学校でのいじめの問題をはじめ、被害者であったり差別の対象となっていた方が多くいる現場ですから、福祉の現場を経験していることで、巡り巡って人にやさしくなれたら最高ですよね。


吉田:僕は障がい者の方を障がい者と思っていない。そういう接し方を彼らもしてくれたら、いい世の中になると思う。

藤田:「支援者と利用者」というより「人と人」で向き合ってくれるから信用できる、嬉しいという方もいるはず。

吉田:最初から決めていることがあるんですが、専門職として上から接するのではなく、もちろん学ぶべきところは学んだ上で、永遠の素人として「人と人」で向き合いたいと思っています。

藤田:改めて今、事業を開始した思いやミッションを教えてください。

吉田:差別が好きじゃないんです。今までずっと健常者相手に物を売る仕事をしてきましたが、人から感謝される仕事、役に立つ仕事がしたいと思っています。

日常で困っている方がいるわけで、お手伝いするだけで喜んでもらえる。福祉事業はお金をもらうキャッシュポイントは違うわけですよね。

その人に対して顔色うかがってお金のことを考えながら取引をするのではなくて、純粋にサービスを提供できる。お金は別のところ(国)からもらえるというのは精神的に良いかなと思っています。

株式会社HOPのグループホームでは入居者&スタッフを募集中!!

2024年2月にオープンしたばかりのプライムではまだまだ入居者を募集しています。

大学生トリオが活躍する夜勤バイトも募集中!無資格OK、比較的アイドルタイムが多い仕事です。やるべき事をやった後の待機時間は、何もなければ自由にしていいとう、学生にとっては、うってつけのバイトです(大学の課題やレポートを夜勤の勤務時間にやってるそうです!)食事の準備も配食サービスを利用しているので、ご飯とお味噌汁だけ作ってもらっています。料理を作ったことがない人も是非チャレンジしてみてくださいね!

お問い合わせはHOPのInstagramまたは、以下までDMしてくださいね!

Instagram:https://www.instagram.com/hop_grouphome/
Mail:hop_info@grouphomehop.com
HP:https://www.grouphomehop.com/
 

インタビュー動画【前編・後編】も是非ご覧ください!



<概要>
・利用者が途切れない⁉HOPが運営するグループホームが人気の秘訣とは!?
・大変だったことと経営への想い
・脱サラして福祉業界で起業した背景
・HOPの今後のビジョン




<概要>
・創業から現在までの営業活動
・グルホネットや藤田に望むこと
・創業期の失敗談、行政は何も教えてくれない⁉
・福祉事業の持続・成長に必要なこと

グルホネット編集部
グルホネットのコラム、取材記事といったコンテンツ作成を担当しています。就労継続支援A型に勤務されている利用者さんといっしょに作成しています。