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グルホ研究会主催オンライン勉強会レポート:銀行融資を活用した介護・福祉業界の戦略的な財務管理

事業拡大や運転資金の確保など、経営における資金調達は永遠の課題です。特に、障がい福祉事業のような社会貢献性の高い事業では、安定的な資金調達が事業継続の鍵となります。

4月24日に開催されたグルホ研究会のオンラインイベントでは、税理士の中島様をお招きし、銀行融資を獲得するための財務管理として押さえておきたいポイントを解説していただきました。

勉強会の目的

障がい福祉事業において、銀行融資は事業成長や設備投資、人材確保など、様々な場面で活用できます。しかし、新たに融資先を探すにも、どういう基準で選んだらいいのだろう?
審査プロセスが不透明で、なにを準備したら良いのかよく分からない。長期で融資してほしいけど、その分負債も増えて財務状況にどう影響するのか不安…。と言う方も多いのではないでしょうか。

今回のイベントでは、介護・福祉業界に精通した税理士・中島由雅氏を講師にお招きし、銀行融資を活用するために、財務諸表の見方、比率の妥当性など銀行側が見ている”事業の財務的リスク、資産と負債の状態、および事業の持続可能性”がどこで判断されているのかを分かりやすく解説していただきました。
 

金融機関との関係構築のポイントを知ろう!

ここでは勉強会でご紹介いただいた『金融機関と良好な関係を築くためのポイント』を紹介します。他ではなかなか聞けない、現役の銀行監査役としての顔を持つ中島さんから見える銀行内部からの景色をチラ見せします!

・銀行が融資したい企業とはどんな企業?
・貸借対照表(BS)の見方と、銀行が見ているポイント
・事業計画ってどのように作るの?
・お金はどれだけ、どこから借りたらいいの?
・長期?短期?期間の設定のポイント


それぞれ詳しく解説していきます!銀行の裏事情が飛び出すかも!?
是非、最後までご覧ください!

銀行が融資したい企業とはどんな企業?

ズバリ、コロナ融資と言われているゼロゼロ金利で融資が受けやすかった数年前とコロナ後の今を比較して、どういう事業に融資をしたいと銀行は考えているのかを聞きました。

ゼロゼロ金利以降、融資額の目標額が上がってしまい、どの銀行も実は新規の融資先を探して売上げ目標額を達成することに必死です。

かつては①③の企業に融資がされる傾向があり、②の企業はなかなか融資を受けられませんでしたが、今は②の企業でも、財務諸表がしっかりしていていれば、十分融資を獲得することができます。それくらい新規の融資先を銀行は探しています。

この状況を逆手に取り、銀行融資を勝ち取るための事業計画書を作成するためのポイントを見ていきましょう!
 

貸借対照表(BS)の見方と、銀行が見ているポイント

細かな金額に一喜一憂するのではなく、塊(面積)で把握しましょう。よく、流動資産に対して流動負債より〇%多くないとダメだとか、そうじゃないと融資が受けられないと言われていますが、割合ではなく塊の大きさで金融機関は善し悪しを判断しています。

一般的に損益計算書のほうに興味を持たれる方が多い傾向にありますが、銀行は損益計算書だけでなく貸借対照表も重要視しています。なぜなら、企業がこれから長期にわたってお金を返すだけの体力があるのか分かるのが貸借対照表だからです。

詳しくそれぞれの状況を見ていきましょう。
 

【左上】 一年間にもらえるお金(流動資産)が、将来返さないといけないお金を全て賄えるだけの流動資産がある状態です。これは非常に優良な状態です。細かな数字ではなく、塊でみていきます。

【右上】 一年間にもらえるお金(流動資産)で、その年に支払が必要な負債は賄えていますが、借金に関してはまだまだある状態です。

【左下】 一年間にもらえるお金より払わないといけない負債が多い状態です。これは大変資金繰りが厳しい状況です。貸借対照表はその瞬間で切り取った表なので、すぐに潰れるといった状況ではないにしろ、支払の方が多いわけですから、資金繰りが厳しい状況といえると思います。

【右下】 これが一番危険な状態です。銀行が一番嫌がるのは資産より負債のほうが多い債務超過の状態です。これだけは避けていきましょう。
 

これは実際の企業(介護事業者)の推移ですが、純資産は創業から現在に至るまでの頑張った成果として積み上がってきますので、ぜひ、図でみることと、推移を見ることを重要視していきましょう。

銀行が”実は”見ているポイントをこっそり解説していただきました!

現金勘定が現実からかけ離れていないか

銀行口座を介しての取引は通帳に取引額が記載されているので、金額がズレることはないですが、一度銀行から小口現金として引き出した先の現金勘定が、実際の金額と合っているかについてはよく見られています。現金として200万あると帳簿に記載があるのに金庫にある実際の現金と合っていないという状況ですね。

銀行は小口現金として引き出された後の現金の増減が、領収書や帳簿によって確認ができる状態になっているかどうかを気にしています。

現金化されたお金の用途が曖昧になっていないか、プライベートな支出に使われていないか、粉飾していないかを見ています。

貸付金がないか

代表者が使う場合、貸付金で処理をしますが、単なる貸付だけでなく、行き場のない使途不明金をまとめて貸付金として認定されてしまうこともあります。この貸付金の額が多いと銀行としては個人的に流用していないかどうかを疑ってきます。

本人及び身内の借入金は不利になるのか
一方で本人および身内の借入金(持ち出し)があっても、銀行では資本金と同等とみなすので銀行的にはあまり不利になりません。

明確な返済期日がない借入はあるとき払いで問題ありませんし、貸主と借主の合意があれば利息も発生させないことも可能なのでそこまで心配しなくても大丈夫です。

債務超過になっていないか

ただし、本人や身内からの借入金が膨れに膨れ上がってしまった結果、債務超過になっている場合は注意が必要です。この場合、経営者が給料(経費)でもらうより借入金の返済というかたちで債務超過分を減らしていきましょう。借りたお金を返しているだけなので、受け取る側は所得税等税金はかかりませんし、債務が減ることによって貸借対照表の状態もよくなります。給与と同等の金額を本人が受け取るにしても借入金の返済をすることでメリットが生まれます。

事業計画ってどのように作るの?

ズバリ、事業計画は松竹梅の3パターン用意しましょう!そしてNGワードは『とりあえず10%UP』

この解説に、「なるほど!」と気づきになった方が多かったです。
特に、事業計画を松竹梅3パターン準備するとよいという解説が響いたようです。

中島さんに詳しく解説していただくと、ベストの状態を提案しないと融資が通らないと思われがちですが、銀行マンも日本人なので、最高な計画一つだと「もし失敗したら」と不安、最悪なケースを想定した計画があると「じゃぁ、真ん中で」となりやすいそうです。通したい事業計画を真ん中に据えて、ストレッチゴール的なベストな事業計画と、最悪の事業計画も準備することがポイントだそうです。

ぜひ、融資で相談に行かれる予定の方は試してみてくださいね!

お金はどれだけ、どこから借りたらいいの?

借りる金融機関についても、日本政策金融公庫や福祉医療機構(WAM)、地域の制度融資と、民間の銀行は棲み分けており、競業しないのでうまく使い分けて融資先を持ちましょう。

信用金庫はサブの金融機関としてのポジショニングが多いので、メイン銀行よりは融通を利かせてくれる体質のところが多い。金融機関は1つよりも2つ、複数あることで相手行へのけん制になり良好な関係性が構築しやすいようです。

長期?短期?期間の設定のポイント

「借り入れ額が増えると、月々の支払も増えて利益を圧迫しそう…」と、なるべく借金をせず経営をされている事業所様も多いかと思います。そういった思いから、借りたとしても短期で返せるようにと、借入期間を短く設定されている方も多いそうですが、この考え方に中島さんは警鐘を鳴らします。

今までの説明でも、銀行は意欲のある事業者でかつ、安全性のあるところに融資したいと考えています。

期間を短く設定することで、毎月の返済額分の利益を出すのが大変だし負担…。というよりは、毎月確実に返せる金額に返済額を設定することが大切です。

というのも、返済できず期間を猶予してもらうことはもちろん可能ですが、それを一度でもしてしまうと、信用力が下がり次回の追加融資は難しくなってくるでしょう。

ギリギリの利益で余裕なく返済していくよりは、余裕のある返済額で、もし利益が上がれば繰り上げ返済していく方が返済を滞るよりは遥かに銀行側への心証もよく、次回以降の追加融資の道も拓けます。

ポイントは「借りられるときに借りる」「借りるなら長期」を念頭に借入額や借入期間を検討しましょう。

裏話として、銀行マンもサラリーマンなので、支店長が2~3年で交代になり、融資の方針ががらりと変わったり、担当者がいなくなったりすることで、良好な関係を築いていたとしてもいつその関係が崩れるのかは誰にも予測ができないとのこと。また、融資はお互いによくも悪くも人質と同じだと中島さんは語ります。

「それだけの金額を融資してもらっていると言うことは、かけがえのないビジネスパートナーのようなものです。銀行を通して事業に関連するキーパーソンを紹介してもらったり、事業を拡大するために必要な情報を得るために銀行をうまく利用しましょう」と教えてくださいました。

まさに目からうろこの情報ですね!

▼今回の勉強会の講師、中島由雅氏が所長を務められている株式会社中央総研のホームページはこちら
https://chuosouken.com/index.html

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