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人間関係は仕事のモチベーションを大きく左右する

グルホネットでは、障害福祉事業を経営する事業者様向けに事業運営に役立つコラムをお届けしています!今回は、人材育成の専門家である長谷香代子さんに、肉体的にも精神的にも大変な福祉の現場ならではの人間関係構築のポイントについて解説していただきました!

私は現在、人材育成の企業研修やコンサルティングの仕事をしています。講師や経営者仲間には、介護事業所を経営されていたり、介護職に就いている方も多くいらっしゃいます。お話を伺うと、「本当に大変だけれども、とても重要な仕事だな」という感想をいつも持ちます。

そして、中には肉体的にも精神的にもつらい場面が多く、「向いてない」「辞めたい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。きっと皆さんもそう感じることがあるのではないでしょうか。
 

公益財団法人介護労働安定センターの「令和2年度 介護労働実態調査」による、「介護職を辞めたい理由ランキング」によると、1位に僅差の2位に「人間関係に問題があった」という項目が、男女どちらもランクインしています。二つを合算すると、やめたい理由のトップとなりそうです。

この記事では、介護職員が問題視する人間関係がどのようなものなのかと、人間関係を円滑にするためのコミュニケーションのコツについてお伝えします。

介護現場でのコミュニケーションエラーの背景

私の友人の介護士が20代の時に語っていました。

「ベテラン介護職で、同じチームの女性がとても気分屋で困っている。特に私は目をつけられてしまったのか、理不尽に怒られる。そのことを相談したいのだが、みんな忙しくて相談に乗ってもらえない。それに、相談しても、誰も彼女に意見できない。本当に孤立していて辛い。やめたいけど、踏みきれず、どうしたらいいのかわからない。」

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。

介護職の仕事の特徴としては、以下のことが挙げられます。
 

・チームで仕事をすることが多い…人間関係は他の職種よりも濃くなる傾向にあり、ひとたび関係性が悪化すると、仕事に大きな悪影響を及ぼすことが多いのです。

・価値観の多様性…介護職員の経験からの価値観は様々です。また、利用者様もいろいろな方がいるため、対応方法の正解が見えにくい場面が多いため、意見の対立が起こりやすい構図になっています。

・人手不足によるタイムマネジメントの難しさ…介護職員は、24時間365日、利用者の方に寄り添いながら介護を行うため、業務量が多くなる傾向があります。そのため、人間関係をマネジメントしたり、そのポストに立つ人材育成をする時間を作ることが難しいという背景があります。また、互いの意見や価値観をじっくりと話し合う時間を取りにくいという点も挙げられます。

このように、職員同士の適切なコミュニケーションができておらず、職場内のサポート体制が整っていない場合、人間関係のストレスはより深刻化します。そして、仕事へのモチベーションややりがいにも影響を及ぼします。その結果、人間関係で離職をしたいと考える方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 

良い人間関係を作るためのコミュニケーションのコツ

そんな時間のない中でも、良い人間関係を構築していく方法はいくつかあります。この記事では、2つのコミュニケーションのコツをお伝えします。


1.    挨拶+続けて一言

人が人を信頼するためには、コミュニケーションの回数を増やすことが大切です。ここで、日本交通三代目社長の川鍋一郎氏の、コミュニケーション論をご紹介します。

日本交通は、創業80余年の歴史を持つタクシー会社です。しかし、川鍋社長が就任した際、1900億円の負債がありました。その後、さまざまな手法で見事に会社再建を果たし、業界売上高日本一を達成されました。

著書『タクシー王子、東京を往く』の中で、「信頼関係を築くためのコミュニケーションは、質で揺さぶることもできないことはないが難しい。そのため、量(回数)で勝負することが必要だ。」と語っています。

皆さん自身も、初対面の方に深い悩みを話すことはないと思います。軽いコミュニケーションを何度も重ね、相手の人となりがわかってから、心を開いて深い話をするのではないでしょうか。

その回数を稼ぐことができるのが「挨拶」です。挨拶は、顔を合わせれば必ず行います。その必ずする挨拶を活用し、コミュニケーションを深めるツールにしてしまおうというのが、「続けて一言」です。

<例>
朝会った同僚が、昨日遅くまで残業をしていた→「おはよう、昨日は残業、大変だったね。」
うきうきとしている様子の同僚に→「おはようございます。楽しそうだけど、何かいいことあったの?」
など、相手の様子に合わせて、一言声掛けをするのです。

挨拶をされる側の心理としては、「あれ?こんなことまで気にしてくれていたんだ。」と親しみが沸き、心の距離が近くなります。そして、相手にも一言付け加えたくなることでしょう。ですが、この声掛け、最初はなかなか言葉が浮かばないかもしれません。なぜかというと、相手の様子をしっかりと洞察しなければ、相手の心にフィットした声掛けができないからです。

つまり、相手に関心を持つという、コミュニケーションにおいて一番大切な土台を育てることができ、職場コミュニケーション改善の基盤が整うのです。
 

2.    IメッセージやDESC法で伝える

私の友人の事例のように、言うべきことが言えないと感じたときには、伝え方を工夫しましょう。
まず、Iメッセージで主語を「自分」にして伝えましょう。自分自身の意見として伝えることができるため、相手を否定せず、柔らかい印象を与えます。

<例>
(私は)連絡がなくて心配だ
(私は)そう言われると悲しい
(私は)少しイライラしています
(私は)その場所に行くのは心配だ

一方、YOUメッセージは、主語を「あなた」にするため、否定的・命令的なニュアンスとして伝わってしまうこともあります。

<例>
(あなたは)連絡をすべきだ
(あなたは)そう言うべきではない
(あなたは)私をイライラさせています
(あなたは)その場所に行ってはいけない

出来るだけ意見を伝えるときは、Iメッセージを使い、相手に配慮しながら否定することを避けて伝えることで、人間関係の悪化を防ぐことができます。
 

また、DESC法とは、Describe(描写)・Explain(表明・共感)・Specify(提案)・Choose(選択肢提示)の頭文字からなる言葉で、4つの段階に分けて自分の気持ちを伝えるコミュニケーションスキルです。

ポイントは、Explain(表明・共感)のフェーズで、しっかりと自分の気持ちをIメッセージで伝えたうえで、相手の気持ちや状況を推し量り、共感を表すのです。

この流れで伝えると、自分の言いたいことや伝えるべきことを、相手を尊重し角を立てないように伝えることが可能になります。

自分も相手も尊重したコミュニケーションを目指そう!

今回お伝えしたコミュニケーションのコツは、実は、アサーティブ・コミュニケーションの手法です。アサーティブとは、「適切な自己表現」と訳され、まず「自分の言いたいことを主張する権利を持っている」、と認識することからスタートします。

そこには、自分の考えを主張しないことは、相手に失礼であるという考え方も含まれています。次の事例を想像してみてください。

あなたの友人のAさんが、あなたに言いたいことがありました。しかしながら、あなたに伝えることが失礼だとか、あなたを傷つけると思い、長い間言わずに我慢していました。

ある時、全くの第三者から、「Aさんが、あなたに対して、○○なことが言えないって悩んでいたよ。」と耳にしたとします。皆さん、きっと「え!そんなことなら早く言ってくれたらよかったのに…」と驚いたり、悲しくなったりしないでしょうか。

アサーティブ・コミュニケーションでは、自己主張しないことは、相手の知る権利を害するということになるのです。つまり、お互いに考えていることを伝え合うということが、良い人間関係形成のスタートであるというスタンスです。ですが、一方的に押し付けるような伝え方をしては、相手は心を閉ざしてしまいます。そのため、相手のことも思いやり、気遣いをすることを忘れないようにしましょう、というのがアサーティブ・コミュニケーションの定義です。

25年前に戻り、悩んでいた20代の友人に伝えてあげたい気持ちになりました。そして、皆様の人間関係づくりにお役立ていただき、良い職場づくりに繋げていただければ嬉しく思います。

長谷香代子さんが経営されている株式会社KYOSHINでは、オンライン、リアルで様々な業界・業種の方向けに実践的なクレーム対応講義をご提供されています。
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グルホネット編集部
グルホネットのコラム、取材記事といったコンテンツ作成を担当しています。就労継続支援A型に勤務されている利用者さんといっしょに作成しています。