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福祉現場のクレーム対応で大切にすべきこと

グルホネットでは、障害福祉事業を経営する事業者様向けに事業運営に役立つコラムをお届けしています!今回は、電話対応コンサルタントの長谷香代子さんに、福祉の現場ならではのクレーム対応で役立つポイントについて解説していただきました!

日々の業務で、お客様に怒鳴られ、不満をぶつけられたことで、心が折れそうになったり、どのように解決したらいいのかわからなくなってしまったこともあるでしょう。利用者様のために、懸命に日々頑張っている皆様のために、福祉現場のクレーム対応に役立つポイントをお伝えいたします。

クレームの本質

まず、クレームの発生原因とは何かを考えてみましょう。クレームは、お客様が商品購入やサービスを受ける前に持っている期待値より、品質が下回ったと評価された場合に発生します。クレームは相手の怒りの感情に対峙するため、対応者が深く傷ついてしまうということも少なくありませんし、それが原因で離職に繋がってしまうこともあるでしょう。

そして、実は介護・障害といった福祉現場に対するクレームはとても激しいものが多いのです。なぜならば、利用者様の家族という、第三者がクレームを申し立てることも多いからです。想像して欲しいのですが、あなたにも、きっと大切な方がいらっしゃると思います。ご両親や子供さん、パートナーさんなど、守るべき存在の方が傷つけられていると感じたら、自分が不満を持った時よりも、きっと感情のボルテージも上がりやすく、より強固に意見の主張をされるのではないでしょうか。

つまり、福祉現場でのクレーム対応において重要なことは、まずは、強く出がちな相手の怒りの感情に巻き込まれないように心を守るということです。そして、相手の期待していることを的確にとらえ、対応することが大切なのです。
 

まず心情的解決を図る

まず、心を守るうえで知っておいて欲しいことは、クレーム対応において、相手の要望をすべて解決しなければいけないというのは誤解だということです。

職員は、仕事として利用者様とご家族に接しています。そして、会社として、社会にサービスを提供しています。その範疇で、出来ることとできないことがあります。その、できないことを「できない」とはっきり伝えることは、クレーム対応をするうえでとても大切だということをぜひ覚えておいてください。

ただし、順番には気を付けなければなりません。できないと伝える前に、感情的解決をしておく必要があります。なぜならば、感情が高ぶって号泣しているときに、相手にどんな言葉をかけても届かないと感じたことはありませんか。「できない」ことを受け入れてもらうためにも、まずは冷静になっていただくよう促すことが大切なのです。
 

効果的なクレーム対応プロセス

それでは、福祉現場でのクレーム対応に効果的な、2段階プロセスをお伝えしたいと思います。

1.    怒りの原因になる感情を見つける
実は、「怒り」の感情というのは作られた感情なのです。アンガーマネジメントという心理学の手法において、感情は「一次感情」と「二次感情」に分類されます。「一次感情」とは、『悲しみ』『虚しさ』『苦しみ』『心配』『さみしさ』『困惑』等があげられ、これらは、何か物事が起きた瞬間に湧き上がってきて、コントロールができない感情です。そして、図のように、一次感情を入れるコップがあふれ出してしまったがために、二次感情である「怒り」に発展してしまうのです。つまり、一次感情のコップがあふれる前に、強く感じていることに対してケアすれば、怒りを鎮めることができ、クレーム解決に繋がるのです。
一次感情の見つけ方のポイントは、「もし自分だったらどう感じるか」と常に意識しながら、コミュニケーションをとることです。

ここで、『心配』が「怒り」に変換された会話事例を見てみましょう。

あなたは、利用者様のお宅にケアをするために向かっています。道路が混みあっていましたが、間に合うと思っていたので連絡はしなかったのですが、結果、気づいたら遅れてしまっていました。
 

相手の怒りに繋がった一次感情は何だったのでしょうか。あなたなら、どんな一次感情が湧いてきますか。例えば、途中で事故に巻き込まれ、来れなくなったのではないかと心配をするかもしれません。そうだとしたら、やっと現れたあなたを見て安心したと同時に、『心配』が「怒り」に発展したのです。

2.一次感情をケアする言葉をかける
次は、その言葉を具体的に口に出してお詫びをするのです。プラスして、状況を復唱して伝えるとさらに効果が上がります。復唱とは、相手の言葉の一部を繰り返すことにより、共感を相手に伝えるコミュニケーションスキルです。まず、一次感情も伝えず復唱もしない例を挙げます。
 

もう一つ、一次感情と復唱を伝えている例を見てみましょう。

いかがでしょう。お詫びの内容が具体的になり、共感の気持ちが伝わるため、怒りのボルテージが下がります。

相手の気持ちを理解することがクレーム対応の第一歩

少し私の実家で起こったことをお話しさせていただきます。

私の祖母は認知症でした。そして、転んで足を骨折したことをきっかけに寝たきりになってしまいました。時は1990年代。我が家は、祖父・祖母・父・母・私・二人の妹という家族構成で同居していました。まだまだ介護が一般的ではない時代でしたので、私の母が、祖母の介護をメインですることとなりました。そして、ある日、祖母の食事を済ませ体を拭き、体温を測ると微熱がありました。しかしながら、祖父はもう眠りについており、母疲れていたこともあり、祖父には朝伝えようと判断して、そのまま床に就きました。そして翌朝、祖母の容体は変わっていなかったのですが、祖父から大声で怒鳴り散らされたのです。「熱があるなら、たたき起こしてでも報告するのが当たり前だろう!」と。そしてさらに、「食事のおかずの種類が少ない!」「食べさせ方も愛情を感じない!」など、次々と不満が爆発。そして、当時高校生だった私に対しても「お前が何もしないからいかんのだ!」と矛先を向けられ、修羅場になり父が飛んで帰ってきて収めたという、辛い思い出があります。

祖父は、祖母のことをとても大切に思っていました。そんな祖父は、母に対しても「自分と同じように、祖母を大切にして欲しい」という思いを抱いていたのでしょう。その期待を母が裏切ったと感じたため、「怒り」の感情に発展してしまったのでしょう。

人は、人に気持ちを分かってもらいたい生き物です。先述しましたが、特に、第三者からのクレームは、大切な人を守りたいという気持ちを汲み取る意識で接していただければ、これまでとは違ったクレーム解決の糸口が見えてくるはずです。お伝えしたことを、ご自身の心を守りながら、お客様に満足していただける介護サービスの提供に繋げるヒントにしていただければと思います。


長谷香代子さんが経営されている 株式会社KYOSHINでは、オンライン、リアルで様々な業界・業種の方向けに実践的なクレーム対応講義をご提供されています。
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グルホネット編集部
グルホネットのコラム、取材記事といったコンテンツ作成を担当しています。就労継続支援A型に勤務されている利用者さんといっしょに作成しています。