「ありがとう」を伝え続けたい/障がい者グループホーム「きのこ」

実は、私も障がい当事者なんです
生き辛い時期がありましたが、周りに理解ある方たちが居ることに気づけたんです
今の私なら、同じような思いを抱えている方に、理解を示し寄り添えるはず、もっと力になりたい!と
いつしか使命感に駆られるようになりました
真っ直ぐに澄んだ瞳が印象的な障がい者グループホーム「きのこ」統括 宮﨑なつみさん
2025年2月に、大阪市東淀川区にて事業所をオープンされました
今回のインタビューは、共に歩まれる福祉業界一筋の経験豊富なサービス管理責任者Tさんもご一緒にお二人の想いと夢を伺いました

これまでの歩み・・・
長岡:起業前はどんなお仕事をされていましたか?
宮﨑:情報サービス業/パソコンサポートと言って設置や設定のお仕事をしていました
主にパソコンの台数が膨大にある大手企業などで、設置・配線・LED交換などを
決してパソコンに強いわけでもなく、好きなわけでもないのですが
やってみない?と誘っていただいたのがきっかけで始めた感じです
長岡:「誘っていただいた」その背景には何があったのですか?
宮﨑:実は私、障がい当事者で病気を患っていたので、一般企業への就職が難しい時期があったんです
でも非常に理解ある方に出会えて、その方に誘っていただいて・・・
パソコン設定なんて全く分からずでしたが、やればなんとかなるもので出来ちゃうもんですね!今でもときどき携わってます
長岡:やればできると自身を鼓舞して乗り越えてこられたのではないですか?
宮﨑:そうなんです、少し負けず嫌いなところもあります(笑)
パニック障害があって、ずっとそれだけだと思っていましたが
ある日、診断書を見て驚いたんです、躁鬱と書かれていて・・・でも、これで腑に落ちました
家から出られない、突然倒れてしまう、電車にも乗れず、面接や人前では当然パニックになる・・・
外に出たくて、一歩でも先に進みたいのに進めない!もどかしさと常に闘っているのに、それが周りに伝わらない!
パニック障害は発作が起こるのですが、それだけではない辛さがありました、躁鬱との診断で「あぁやっぱり・・・」と、とにかくこんなにもしんどい思いをするのかとずっと苦しみました
なかなか社会復帰も出来ずにいましたが、とても理解ある方との出会いによって、少しずつ復帰できるようになり、今の私があります
長岡:お辛い経験があっての今なんですね、やはり言葉に重みがあると感じていました
そんな宮﨑さんと共にホームを支えるTさんにもお話を伺いたいのですが・・・
Tさん:私は気づけば生涯福祉の人生でしたね!でも「福祉」とは何か?など専門的な観点がなく
「人」との触れ合いが好きで、おじいちゃん、おばあちゃんとずっと関わっていたいな・・・と
そんな気持ちでこの世界に入ったように思います
大好きな祖母の影響もあり高齢の方と接する仕事がしたいというのがきっかけでした
長岡:以前は高齢の事業でもお勤めされていたのですか?
Tさん:いいえ、それが違うんです
もともと、「人」との触れ合いのなかで何か役に立ちたいという思いが強く、まず専門学校へ通いました
第一希望の高齢者施設で実習を受けていたとき、看護師さんや介護職員さんが「ちょっと待ってて!!」と声をあらげ利用者さんの呼びかけに全く応えなかったんです
その光景を目の当たりにして、少し怖気づいてしまった自分がいました
当時の私は、利用者さんの話を聞いてあげるべきだと思っていましたが、そんな自分もいざ現場に立てば
周りの職員に流されてしまうのではないかと、なぜか突然心が折れて意思がブレそうな自分に気づいたんです
「・・・あぁ、高齢者施設では勤まらないかもしれない」と、少し哀しく感じたことを今でも覚えています
そんな中、後の面接で障がい者の施設で働かないか?とお声掛けいただいき、行くことに決めました
ところが、その施設でもまた思いもよらぬ大きな出来事に直面し「障がい」を知る怖さを痛感し、深さを学びました
このように良いことばかりではないからこそ、改めて、自身の人生も豊かになると感じたんです
それからずっと、私は障がい福祉に身を置いています

※今回、残念ながらTさんのお顔は非公開!
起業のきっかけ・・・
長岡:宮﨑さんは情報サービス業という違う分野でお仕事されてましたが、福祉事業で起業に至った経緯はなんですか?
宮﨑:私自身が障がい当事者で生き辛さを経験しましたし、また、支えてもいただいて・・・
これまでの私と同じような思いを抱えている方を今度はサポートしたいという気持ちが芽生えはじめました
「辛い、苦しい」渦中にいるときは見えていませんでしたが
振り返れば周りに理解ある方が居てくれたことに気づけたんです
気持ちが楽になりましたしこの穏やかな心情を、今、生き辛さの中で迷う方にも届けたくて・・・
これは何かやるしかない!私がやる運命なんだ!!と使命感に駆られ、決めたからには進もう!と
籍を置く会社の代表を何年もかけて説得し続け、やっと首を縦に振ってもらえたので起業できました
長岡:数ある福祉事業の中から「障がい者グループホーム」を選ばれたのはなぜですか?
宮﨑:「家」だからです
その方にとっての「今」一番の居場所となる家で支援させてもらえることが嬉しく思えました
安心して過ごせる住まいを作りたいですね、まずは「家」にこだわりました
長岡:ご自身で強く「起業」を決意された背景には、もっと深いエピソードが隠れてそうですが・・・?
宮﨑:そうですね、私の母の想いとサービス管理責任者のTさんとのご縁が私を強くさせてくれました
立ち上げ前に、障がい者グループホームのずさんな体制や支援がきちんと届いていない事業所のことなど
情報としてたくさん耳にしていましたし、実際にグループホームの現場を支援員として経験した母からも
親御さんが「安心して預けられる場所がない」「この子の将来が不安」と言った声を聞いていました
母自身もご家族の想いに触れ、負担や孤独を少しでも拭える場所をいつか作りたいと願っていた一人でしたから
そんな母の想いも手伝って、余計に私は「こう在りたい」という思いが強くなり、より明確になっていきました
でも、そう簡単にはうまくいかないと言われることが多かったのですが、唯一、母の繋がりで出会えたTさんは私の描く想いに無条件で賛同してくれていたんです
母も、Tさん推しで「この人だったら絶対いいよ!」と言ってくれていたので、どうやってTさんにオファーを出そうかと、実は数か月かけて悩んだんです
でも、Tさんの人柄に触れれば触れるほど想いも募りますし、やっと共感しあえる方に出会えた!Tさんとなら絶対にやっていける!と確信していたので
改めて一緒にやりませんか?と正式に熱烈オファーを出しました
長岡:Tさん!これは嬉しいですね~!熱い想いやラブコールを受けたら「よし、やろう!!」と言った気持ちになりますよね?
Tさん:いいえ、断りました!
実は、他にやりたいことがあって・・・
自身の年齢も考えて、次に働く場所があるなら、ここが最後で良かった!と心底思える場所で働きたいですし、大きな夢もあったんです!
宮﨑さんを中心にご一行様が、私のところへわざわざ挨拶にお越しくださったりしましたが
それでも断り続けてたんです
だって・・・私にもやりたいこと「夢」がありましたから
長岡:何度もオファーを出しているのに、断られつづけていた当時のお気持ちはいかがでしたか?
宮﨑:いや、断られること前提だったので、やっぱりな・・・といった感じでした
でも、まぁ断られてからが勝負なんで!(笑)
ダメもとで、とにかくしつこく何度も何度もオファーを出し続けました!
どうしても、なにがなんでもTさんと一緒にやりたかったので
長岡:一方で、なにがなんでも断り続けていたTさんは、なぜ、突如オファーを引き受けることにされたのですか?
Tさん:あるとき「Tさんのやりたいことって何ですか?」と問われて・・・
就労など「農業」を交えた事業をやりたくて、改めて学びを得たいんです!と答えました
すると「その夢、一緒に叶えましょう」と言っていただけたんです
そもそも、これから新しい事業を立ち上げると言うのに、こんな私の夢にまで関心を寄せてもらえるなんて
思いもよらぬ言葉をいただけて、とても嬉しかったですし、あの瞬間は忘れられません
宮﨑さんを信じよう、ここまで言ってくださるならついて行ける!と思いました
今後、意見の食い違いや衝突はあると思うんです、でも裏切らない、裏切れないという「覚悟」が持てました
長岡:伝わるまで伝え続けた宮﨑さんと、夢を公言されたTさんと・・蓋を開ければ相思相愛だったような絆さえ感じますね!
Tさん:完全に「人」に惹かれました
宮﨑さんは、上辺ではなく「まごころ」があり、胸の内を見せてくれる人だと感じたんです
こんな方たちがいる環境で、自分がやりたいことも実現できたら最高だと、また夢を見させてもらえた気がしています
人生最後の職場が、この方たちとなら幸せだろうなと・・・
障害者グループホーム「きのこ」について
長岡:ここからは、お二人の想いが詰まった障がい者グループホーム「きのこ」について伺いたいのですが、名称の由来を教えてください
宮﨑:最初のころは、いわゆる「福祉っぽい」感じも考えましたが、ん~違うなぁ・・・とやきもきしつつ、こだわっている「多様性」をどうやって表現しようかと考えていた時
パッ!と閃いて「きのこ」って多様性の代表でネーミングもなんか可愛い!と思って、もうそれ以外考えられなくて
Tさん:私も「きのこ」にすると聞いたとき、多様性だもんね!と一瞬で意図を汲みました
相談支援事業所などへご挨拶に行くと「なんできのこなんですか?」と必ずといっていいほど聞いてもらえるんです
そこから話も拡がるので、とても嬉しいですね!
長岡:多様性を表現したいとのことでしたが、自社の支援の在り方としてこだわりはありますか?
宮﨑:完全なる自立支援ですね!
そして、ワンルームタイプですが家族のようでありたいんです
利用者さんそれぞれ、目的も思いも全て違うので、ただの住まい提供ではなく
目指す形、目標を達成してもらえるように私たちも励みたいと思っていて・・・
先日、体験に来られた方が「もうここに一生住みたい」と言ってくださったんです
こんな嬉しいことあります!?
食事も、最初は干渉されたくないと言われてたのに、突然、みんなで食べたいとまで言ってくれて!
なので急遽、みんなで食べました(笑)
その時々で、利用者さんの「こうしたい!」をなんとかして叶えるのが「きのこ」で在りたいですね
Tさん:それぞれ皆さんの背景やご家族のことなど、許されるならば可能なところまで寄り添い、私たちの想いを行動で伝え続けていきたいですね
美味しい手料理にもこだわっています、やはり家族のような存在ですから単純に「美味しいごはん」を食べて欲しいなと思うんです
私たちの世話焼きでお節介な親心かもしれませんが「家」ですから…温もりを大事にしたいですね
レクリエーションも季節の行事だけでなく、例えば電車が好きなら何か企画してみんなで見に行きたいなと思いますし
近所のお祭りにだって、たまには「好きなもの買いや~」なんて言いながら楽しみたい
こうして私たちの方が、夢をみさせてもらってるのかもしれませんが、利用者さんの望みを形にしたいですね
宮﨑:今後、Tさんの夢を乗せて就労継続支援B型事業所の立ち上げも目指しているので
「できること」「新しいこと」「仲間がいること」など色んな気持ちを感じてもらえる道しるべになりたいです

最後に・・・
長岡:これから「きのこ」を利用される方にメッセージをおねがいします
宮﨑:どんなことがあっても、やっぱりここに居てよかったと思ってもらえるようにサポートさせていただきます
あなたの居場所がここにあります、ためらわず会いにきてください
「きのこ」を選んでくれてありがとうと伝え続けたいです!
長岡:これから「きのこ」で働かれるスタッフさんにもメッセージをお願いします
宮﨑:利用者さんにとって「ここに居てよかった」と思っていただける環境とは何か?を一緒に考え、創っていきましょう!
みんながみんな同じ温度感で居ることは、もしかしたら不可能なのかもしれません
でも、利用者さんに対して自分自身の想いをどう表現すれば伝わるのか、温もりはどう創り出せるのかなど
相手に想いを寄せてくださる方と「きのこ」を育てて行きたいと思っています
素敵なお話をありがとうございました!

株式会社エーソリューション
障がい者グループホーム「きのこ」
https://www.guruho.net/facility/81980

営業・広報・職業指導員・秘書業務とマルチにこなす
グルホネット/グルホ研究会の窓口担当
また、コンサルタントの助手として
皆さんのお困りごとに寄り添うサポーターも務めている
もちろん世話人経験あり!